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    上下のシャツだけといふ奇妙な恰好で房一が台所に降りかけた時、はじめて彼はそこに誰か立つているのに気づいた。

    熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。

    「え、何だつて、徒歩てくで通るかつて?」

    「わしは反対だ!」

    「それあ、もう、掘つても掘つても屑みたいなものしか出ないつて云ふんだがね。まあ、天領の時分に良いところはそつくり掘り上げてしまつたんだらうね。その山をまだ見所があるつて云ふんだから、あてになるやうなならんやうな話だあね」

    房一は患者の前にもどつて来た。

    と、房一が台所に声をかけた。

    どういふ加減からか、それを云ふ時、相沢はぐつと又相手の顔をのぞきこんだ。それは何となくもつたい振つた、重々しい様子だつた。

    築堤へ登る段の所で、長い竿を持ち扱ひにくがつて立停つた房一の背後から、盛子はふいに呼んだ。

    「さあ、くはしいことは判りませんね」

    「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」

    「どうしたんですの?何かあつたんですか」

    「御病人はどちらで?」

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